M&Aの目的は、買い手企業、売り手企業の双方が
シナジーを発揮して、お互いに利益を上げる事です。
しかし、今まで別の会社だったわけです。
双方が当たり前と思っていることが、相手側にとっては
大変な違和感を感じる事はよくあるものです。
その違和感が、積もり積もって大きな問題に発展することがあります。
その違和感を早期に発見し、解決策を見つけていくのも
PMIの大切な役割になります。
PMIは3つのテーマから構成する
Post Mager Integration 略してPMIの
Integrationは統合を意味します。
この2つの異なる企業が統合する時に、
大きく分けて3つの視点から進めていくことになります。
1つ目は、人 つまり人間です。そこで働く経営者から従業員まで、
さまざまな歴史や経験と感情を持つ人間の視点から、
企業の統合に必要な事を見ていきます。
2つ目は、事業戦略です。相乗効果を得る為に、
統合されたわけですから、双方の強みを上手に
発揮するような戦略を見つけていかなければなりません。
市場、商品、顧客、競合などのマーケティングの視点から
ベストなシナジー戦略を見つけ出し、計画を立案します。
3つ目は、管理体制です。財務管理から、営業管理、生産管理、
人事管理と企業には様々な管理体制がありますが、
特にこの3つ目のテーマが一番、違いが明確であり、
統合にあたっては注意が必要な項目なのかもしれません。
優先順位は企業によって変わってくる
これらの3つのテーマはどれも重要ですが、
その優先順位は双方の企業によって変わってきます。
買手が上場企業であるケース。
売り手がたたき上げのオーナー企業であるケース。
双方の組織風土が似ている場合、極端に違う場合、
様々な要因によって何が優先順位が高いのかが変わってきます。
まず最初にやることは、PMIプロジェクトリーダーを決める事
PMIは、誰かひとりがやれば出来るものではありません。
それぞれの部門に精通している人が参加して、
プロジェクトチームを立ち上げて、
目標を明確にし、スケジュールをたてて進めていく。
いつまでも続けているわけにはいきません。
PMIを終わらせる期限を決めて、そこまでにやりきる。
その覚悟が必要です。
その為には、リーダーが必要です。
『色んな問題はある、しかし2社が一緒になった以上
このM&Aが成功だったと誰もが納得するM&Aにしよう』
『その為にこのPMIを必ずやり遂げる。』その覚悟をもった
リーダーが必要です。
普通は、新しい会社の社長がリーダーになります。
その下に、各部門のキーパーソンがメンバーになります。
ここでは、必ずしも、合併前の部門長が就任する必要はありません。
むしろ、かえたほうがいいケースもあります。
いずれにしても、『お手並み拝見』とばかりに、
高みの見物を決め込むような人ではなく、
自ら率先して、ベストな統合に取り組んでくれる
ハートを持った人選が必要になります。
抵抗を恐れない人
M&Aを進めていくときに、人の心は大切です。
特に変われる会社の従業員の気持ちは、つい
『買収された』という気持ちになりがちで、
一歩間違うと、抵抗勢力にさえなりかねません。
だからと言って、そんな人達、特に古くから前社長に仕え
苦楽を共にしてきたような古参社員に気を使いすぎるのはよくありません。
むしろ、この会社は買われたんだという事実をしっかり理解してもらう為に
言うべきことは言う。変えてもらうべきところは断じて変えてもらう
くらいの決意を持って臨むべきです。
長年慣れ親しんだ会社のやり方を変えるのは
並大抵の事ではありません、だからこそ、
このタイミング、M&A直後のこの節目を利用するしかありません。
これが、売り手企業の従業員に気を使うばかりに、
そのうち、少しづつ変えていこうという方法では、
なかなか変わらないし、いざ変える時には
数倍のエネルギーが必要になります。
だからこそ『これから私たちはどうなるんだろう』
という不安なその時を最大限利用して
変えてしまう事が必要になります。
そして、その時に大切なのが、
多少の軋轢や不満に屈しない強さ。
従業員さんたちの為にも、なにがなんでも、いい会社を作るという
使命感が必要になります。 相当なエネルギーが必要ですが、
そんな覚悟を決めた人がリーダーに選任されるのと、
そうでないのでは、後の進行に大きな違いが生まれます。
まとめ
企業統合を出来るだけスムーズに上手に進めて成果を出すためには
PMIを計画立てて進める事が大事です。
その為の大きな3つのテーマが、人、戦略、管理の3つです。
この中で、最も重要で、最初に決めなくてはいけないのが、
このPMIプロジェクトを進めていくリーダーなのです。
次回からは、まずは、テーマの1番目である人について
お伝えしていこうと思います。
我々人間は、どんなに強制されても動きません。
口でYESと答えても、行動には現れません。
しかし、一旦、腹落ちして、共感したら、
誰に言われるまでもなく、最善の方法を考え抜き
行動に移すものです。