ここ数年、事業の苦戦がつづいているが、我社は金融機関と十分な取引実績と信頼関係があるから、いざとなっても大丈夫だ。
しかし、銀行を取り巻く環境も同様に変化します。
政治的な政策で法律が変わったり、銀行自体の事情が変わったりしたものが、自社に影響を与える事にならないとは限りません。
『もうこれ以上、御社に融資を続けることは出来ません』
いきなりそう宣言されることは、当たり前のように起こります。
『そうなった時の為に、いくつかの銀行とお付き合いしてきたから大丈夫だ。』その通りに他行が肩代わりをしてくれればいいのですが、
銀行というのは、ほとんど同じような基準で審査を行い、同じような結論を出すものです。
どこかの銀行が融資しないという判断をしたようなリスクのある会社を、おいそれと面倒見てくれるほど甘くはない。そう思っておくべきです。
チェック項目① 事業別売上趨勢
事業というものは、ある日突然急激に悪くなるというものではありません。
ジワリジワリと予兆を来たしながら変化し、それらが積み重なっていきます。
ですから、会社の全売上を事業別、商品別、顧客別に分けて、ここ数年の傾向がどうなっているのかをおさえます。
その傾向に従い今後の3年間の売上を想定します。
ここには極力タラレバを排除します。今後力を入れていく事業には特に思い入れも強く、『売上はこのくらい伸びるだろう』を想定したくなりますが、そこは出来るだけ保守的に記入します。
チェック項目② 事業別利益率
市場が縮小したり、競合が激しくなってきて、商品に大きな差別化がなければ価格競争に陥ります。なんらかの手段で仕入れや製品原価の低減を図れていればいいのですが、そうでなければ単純に利益率の減少を招いてしまいます。
これも事業部別に利益率の変化をとらえて行きます。
加えて、売上同様に、今後3年間の利益率の想定を記入します。
ここでも出来るだけ保守的に行います。
チェック項目③ 総合収支過不足
毎月の入金と出金の差を見て行きます。
入金は現金と手形に分かれます。その合計と支出(現金支出と手形決済額)の差額を前月の現預金に加えます。
そのほかにも、金融機関への返済や利息などキャッシュが動く項目全てを加えます。
そしてその月の末に、現預金残高がいくらになっているかを想定します。
成行想定は最悪想定で構わない
成行想定表は目標でも、予算でもありません。このままの状況で推移すればどうなるかを予測する為のものですから、最悪の想定になったとしてもなんら問題はありません。
現状にばかり目を向けて、近視眼的になり、今までどおりの一生懸命を続けていればこうなります。を知る為の表ですから、現実的にはその通りにはならないし、ならない努力を行う為の経営計画を作成し、実行する為の土台になる想定です。
社員(経営幹部)と共有する
成行想定表を経営を実行して行くメンバーと共有します。
『我社はこのままでいけばこうなる』を共有することで、共通の危機感が芽生えます。
社長だけが抱え込むのではなく、現状をオープンにし、ではどうやって乗り切って行こう、を検討する心強い仲間を作ります。『このままでは駄目だ』その覚悟からスタートします。
もちろんむやみやたらな情報公開は社内に混乱を招く事になりますから注意は必要です。
常に修正する
この成行(最悪)想定は、定期的に習性を加えて行きます。
出来れば毎月の経営会議でその時の傾向値の変化を加味して書き変えていきたいところですが、無理がある場合は最低でも半期に1度のペースでは実行したいものです。
万が一に備える事になる。
経営者にとっては、あまり見たくないこの成行想定表も、
いざとなれば力を発揮してくれます。
これをベースにしっかりとした対策が練られている経営計画書があれば
万が一の危機に遭遇したとしても、
『大丈夫、想定内だ』そう言えるのです。