経営理念が必要な理由
経営理念と聞いてイメージするものが、あの社長室や応接室に額縁に入れられて飾ってあるものではないでしょうか。
では、実に多くの企業がこの経営理念を大切にしている理由は何だろう。
これは、個人に置き換えれば『使命』と同じ事である。
我々は生まれた時に、必ず使命を与えられてこの世に生まれてきます。
この使命とは、『社会の為に、この分野をあなたに頼んだよ』と託されたもの。
だから我々には他人には無い、才能が与えられます。その才能を使い使命を遂行する時、他の人には出来ない能力を発揮し、成果を出す事が出来ます。他から見たらとても大変そうに見える事も、当の本人はそれほどでもない。むしろ活き活きとしてやっている。
そうやって与えられた使命を全うすることで、その人の人生が豊かになる。
これが会社にとっての経営理念です。この会社に与えられた社会的使命。この社会を良くする為に与えられた役割。この使命を間違って設定したり、単なる私利私欲の利益追求だけの経営に終始する時、やがて企業は淘汰されていきます。
だからその企業に集う社員や仕入れ先や、お客様には、『我社の使命はこれです』と明確に示す必要があります。『だったら私も一緒に頑張りたい』と思ってもらうのか、『それは私の価値感と違う』と思われるのか。それによってパートナーやターゲットが変わってきます。だから多くの企業がホームページや会社案内で自社の理念を公にしているのです。
『理念で飯が食えるのか?』とご意見を頂く事がありますが、『理念が無いと企業という船はやがて目的地を見失い辛く厳しい航海になってしまいます』
この理念(使命)を一生懸命に遂行する時、よく不思議な事が起こります。
あたかも、偶然上手くいったように見えたり、窮地で奇跡が起きたり、辛い事もみんなで活き活きと乗り越えられたり。しかしそれは不思議でもなんでもない、託された事を成す時に応援されているがゆえの必然なのです。
経営ビジョンが必要な理由
しかし、経営理念は企業の使命という壮大な目的なだけに、すぐには到達出来ません。
つい、途中で道を間違えたり、悩んでしまう事があるものです。
だからビジョンという経営理念に到達する為の道標を設定します。
自社にとって、従業員にとって、顧客にとって、社会にとって我々は、どんな会社になるのか、何を獲得しようとしていて、獲得した時にどうなっているのかを解り易く、イメージ出来るもの。それがビジョンです。私はこのビジョンに数字を入れる事を進めています。数字でより明確化されたビジョンは、我々の進むべき明確な目標となり、動機づけになる。あそこにたどり着けば、どんな自分になっているかがイメージで出来るようになります。
行動指針が必要な理由
それでも、毎日の仕事の中では、壁にぶち当たる事があります。
同じ目標(ビジョン)に向かって進んでいるのに、見解が分かれ、理解の不一致が生じます。担当や部署によっては景色が違って見える事があるものです。それぞれが自分のメガネで仕事や世の中を見てしまうとおのずと違って見えるものです。それは組織内に不協和音を生みかねません。生産性を削ぐ原因にならないとも限りません。
そんな時には、全員が同じメガネをかければいいのです。このメガネにあたるのが行動指針です。我々は何を大切にして行動するのか。判断の基準に何を置くのか。それらを明文化して、何度も共有して、共通の価値観になるまで浸透させます。
この経営理念とビジョンと行動指針が三角形のそれぞれの頂点として存在し、きちんと定着した時、会社は与えられた使命に向かって邁進しつづけ、必要とされる存在になって行くものだと思うのです。